白髪染めで「緑色」になった髪を直す方法!美容師が実例と共に解説
美容室では様々な「予期せぬ出来事」が起こりえます。
今回は僕自身が実際にサロンワークにて遭遇した「ある事例」をご紹介致します。
ヘアカラーで髪が「緑色」に!?
ご新規のお客様のカウンセリングをしていた時のこと。お客様の毛髪コンディションを観察していると、髪の毛の一部が不自然な「緑色」をしている事に気がつきました。
「おや?」と思い尋ねると、どうやら数日前に突然「緑色」に変色したのだとか。
そこには僕ら美容師も困惑するある『驚きの事実』が隠されていました。
太陽光で染まる白髪染め
その方のお話を詳しく聞くと、友人の紹介である商品を3ヶ月ほど使用していたそうです。その商品は、お出掛け前に白髪の気になる部分に塗布して外出をし、太陽の光を浴びると黒く発色し白髪をカバーリングするというもので、商品自体はダメージもなく安心して使えるというキャッチコピーのもと主にネット販売されており、調べてみると使用経験のある方もかなり多いようでした。
その後商品を使用し続けていたある時、通常の白髪染めをご自身でされたところ髪の毛の一部が突如「緑色」に変色したのだとか。
恥ずかしくて出歩く事も苦痛なので、何としてもこの緑色を治してほしいというご要望でした。
原因は「硝酸銀」という内容成分
出典:https://nisimoto.wordpress.com
そもそもなぜ太陽の光を浴びる事で白髪が染まるのかというと、この商品に含まれる【硝酸銀】という金属系の成分が紫外線を浴びる事で黒褐色に発色するという仕組みになっているためです。これだけ聞くと大した問題の無いように感じますが、この硝酸銀のある特性が大きな問題点となります。
実はこの硝酸銀という成分、アルカリに反応するとたちまち緑色に変色してしまいます。
アルカリ?と思った方に解説しますと、カラー剤やパーマ剤などには必ず「アルカリ」という成分が配合されています。(そうでないものもありますが、市販の上記製品にはほとんどの場合配合されています)
つまり硝酸銀の働きにより太陽光を浴びると白髪が黒く染まっていきますが、その髪の毛に対して通常のカラーやパーマを施すと必ず「緑色」に発色するという事態を招きます。
赤系カラー、アッシュ系カラー、イエロー系カラー…どのような色味の薬剤を使用しても結果は同じ「緑色」です。ではアルカリの配合されていない酸性染毛料(俗にいうヘアマニキュア)ならどうでしょうか?これに関しては薬剤を弾いてしまいまったく発色しません。
原因や解決策を調査させて頂くため、みどり色に変色した髪の毛の一部を頂きその日はお客様に一度お帰り頂きました。
営業後その日のうちに何か解決策はないかと調べ尽くした結果「ヨウ素を塗布する事でみどり色に発色した硝酸銀の働きを弱める事ができる」という情報を見つけ、さっそく試してみる事に。
イソジンを用いた対処法
小学校の理科の授業以来に耳にした【ヨウ素】という成分。実は僕らの身近にこれを主成分としたポピュラーな商品が存在します。
『イソジン』です。
うがい薬として有名なイソジンですが、主成分はヨウ素で構成されています。さっそくお客様から頂いた髪の毛の一部で実験したところ、完全にではありませんが緑色の発色が治っていきました。
(※ 2016年4月1日より「イソジン」という名称は使用されていないようです。)
参照:明治が「イソジン」の名称変更、ブランド移管で「明治うがい薬」に。
翌日、お客様にご連絡を入れ再度ご来店頂き「今、可能性のある解決策はこれ以外考えられないので、100%の保証はできませんが挑戦してみますか?」という言葉にお客様も納得して頂きました。
すぐさまシャンプー代へご案内し、イソジンを原液で塗布。スチームをあて浸透させる事20分…
なんと、緑色がほとんど消えていきました。
その後、酸性染毛料(ヘアマニキュア)で全体をカバーリングし仕上がりはなかか満足のいくものに。お客様にも本当に喜んで頂き僕自身ようやくホッと一息つく事ができました。
事故を未然に防ぐためには
今回のケースはお客様がご自身でカラーリングをした結果緑色になりそれをお治しした形でしたが、もし例の【硝酸銀】の配合された商品を使用されていた方が美容室でカラーリングをした結果緑色に変色した場合、それは担当美容師の『失敗』と捉えられてしまう可能性があります。
そのような事態を未然に防ぐためにも、事前カウンセリングでお客様がそのような商品を使用していないかを担当美容師がしっかりと確認する事が非常に重要であると共に、お客様も担当美容師にどんな些細な事も伝えておく必要があるのだと思います。
「これは別に関係ないかな」
という自己判断は非常に危険です。
普段のヘアメンテナンスの詳細を素直に伝えてくださる事が、僕ら美容師にとってもお客様ご自身にとっても最善の結果となるのです。
ちなみに、
この【硝酸銀】という物質。わずかな摩擦などでも爆発を起こすとても危険な成分です。今回のケースでは緑色に変色するという程度ですみましたが、最悪の場合髪の毛内部で爆発が起こり断毛する可能性があります。ご使用する際はくれぐれも注意が必要な上に、全責任をご自身で負う覚悟が必要です。
最後に、
ここで紹介した「イソジン」を用いた処置方法は、メーカー及び筆者が推奨するものではありません。商品本来の使用用途とは異なるため一切の責任は自己判断及び自己責任の元、今回のケースでは使用致しました。
ただこのような事故が起きてしまった事は紛れもない事実であるため、何かの参考になればと思い公開させて頂きました。ご理解の程よろしくお願い申し上げます。
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